パーカッション・ハンマーを使った症例

2.膝

 

前回と打って変わって84歳!の女性。
今から20年ほど前に銭湯に行っていた際、ある年配の女性が風呂場で転び、倒れこんできたそうな。
とっさに抱きかかえるようにして支えたところ、自分の膝に集中的な負担が生じたらしく、ゴキっと物凄い音がして痛めたとのこと。
あまりにも痛いので後日、整形外科を訪れるも、骨には異常なし、との診断だったという。
しかし、それ以来、雨の日や季節の変わり目、或いは寒い思いをした日の晩などに痛みが出、苦しめられるようになった。
なんと!それが20年に渡って続いていたわけだ。


そして、今までは膝の内側が痛かったのだが、最近では膝全体、つまり膝のどこ?とは特定できないような痛みに変わり、あまりにも辛さが増したので、来院となった次第。紹介はなく、飛び込みでのクライアントである。

 

さて、年齢が年齢でもあるし、強圧は避けたいところ。
かといって、おっかなびっくりで施術しても効かない。
お年寄りの難しいところではある。

 

セオリーどおり、大腿四頭筋系のTP処理を行うと、内側広筋にジャンプサインが現れた。TP的には内側広筋でほぼ決まり。

 

それにしても、この処理などはさほど難しくないわけだから、それなりの治療家に出会えれば、20年も苦しむなどということはなかったはず。
(病院、接骨、整体、マッサージ等には数限りなく通ったらしい)
「縁」を司る神は時として残酷である(そんな神がいるかどうかは知らないが)


されはさておき。
内側広筋のTPだけなら、膝全体に広がる痛みはちょっと解せない。
各所の同時多発的なTP活性も考えらるが、施術した感じではそれだけでもないような気がする。
おそらく、靭帯、骨膜、関節包等の問題が生じているに違いない、と判断した。
そうなると、手だけでは中々難しいわけだ。
ましてや年齢が年齢である。膝を激しく動かす操作もできない。
ということはハンマーしかないではないか。

 

筋筋膜TPの処理と同時に充分に緩めて、そして、ハンマーによって半月板からアプローチした。
外側半月板、内側半月板、そしてTPへ手での按圧。
これを繰り返し、繰り返し行った。

 

最初は不思議そうにその感覚を味わっていたようだが、そのうち目を閉じ、ウトウトし始めた。


はたして、施術後は相当に楽になったようだ。

 

前回の例のように思春期特有の過敏さ故にハンマーでの処置が有効な場合もあるし、今回のように年齢的にあまり厳しい操作ができない場合にも有効である。

 

 

1.脇腹の痛み

 

14歳の女の子。

左の脇腹、つまり通称ヒバラ(脾腹)と言われている部位が痛み、呼吸がしづらいとのこと。

吹奏楽部で金管楽器(トロンボーン)を担当しているため、活動に支障が出るほどであった。

 

ヒバラの痛みと聞けば、内臓的な問題さえなければ、大概は肋間筋、横隔膜、すこし範囲を広げて前鋸筋の問題である。

 

したがって、症例的には決して難しいわけでない。

 

まだ出来上がっていない身体で一生懸命トロンボーンを吹いて、負担が蓄積していったものだろう。トリガー形成されていたのは間違いなく、限界に達して活性化したものと思われる。

 

さて、狙いどころは簡単に分かるのだが、思春期特有の過敏さがあって、どこ触っても痛がる。治療になるかならないかぐらいの圧でさえ、逃避行動を示すのである。

 

たまにこういうクライアントもいないことはないが、それにしてもここまで敏感だと施術にならない・・・はてどうしたものか。

 

試しにハンマーを当ててみると、むしろ心地良い様子。

これで決まり。ここはハンマーしかないだろう、と。

 

起立筋を緩め、腰方形筋(なんとこれは呼吸筋の一つ!)、前鋸筋、肋間筋、肋骨を通して横隔膜にアプローチした。

 

施術中、心地良くて、思わず寝てしまいそうになったとのこと。

また、施術後は顔にほんのり赤みがさして、随分顔色が良くなった。

 

勿論、症状はその場で緩解した。

 

このケースではもしハンマーがなければ、施術を断念していたかもしれない。

 

パーカッション・ハンマ-にはこのような使い道もあるのである。