鎖骨フェチ

 随分昔のブログで自分が鎖骨フェチであることをカミングアウトしているので、今更隠す必要もないのだが、あらためて宣言するにはやや抵抗があるものだ。


 非常に長い間、足揉みをしていて足フェチにはならないのだから、嗜好性(フェチ)というのは面白い。

 

 足フェチで何か良いことあるのか?と言われれば、う~ん、何かあるかなぁ?という返答くらいしかできないが、鎖骨フェチで何か良いことがあるのか?という問に対しては「そりゃ整体的にはめっさごっさありまっせ!」と元気イッパイ答えるだろう。


 どうしてか?という説明の前にまず鎖骨の構造というか、位置関係について述べてみたいと思う。鎖骨を知らない人はまずいないと思うが、この骨の名称由来は少々恐ろしい。


 奴隷や捕虜が逃げ出さないように胸郭出口に穴を開け、第一肋骨上から鎖を通して監禁していたという。つまり鎖骨は「鎖を通す骨」であることから名付けられたというのだ。そこから菌が入って化膿したこともあろうし、場合によってが敗血症で死んでしまう事態さえあったのではないかと思うのだが・・・想像するだけで残酷過ぎて具合が悪くなる。
(※ただし、これは諸説の中の一説であって確定されてはいない)

 

 それは余談として、この骨はまず肩甲骨肩峰部分で「肩鎖関節」という付着部位を作り、さらに胸骨上端で胸鎖関節を形作っている。つまり、肩甲骨と胸骨の橋渡し的な骨だということだ。ここで注目せねばならないのは、「肩甲骨」の位置と連動しているという点である。


 「肩甲骨」は固定箇所の少ない骨格で、それ故、自由度が確保され上肢の動きの制限が少なくなるという利点があるのだが、自身の上下の位置を保つのに、そのほとんどが僧帽筋頼りだという弱点も持つ。


 言い方を変えると、肩甲骨は僧帽筋によってぶら下げられており、僧帽筋の状態によってその位置が変わるということである。
 

 もし、デスクワーク主体で、パソコンばかりやっている職種にあるか、一日中スマホをやる習慣のある人は、僧帽筋に対する下げ圧力が強くなって、僧帽筋が伸び気味になってしまう。僧帽筋に対するストレッチになって丁度良いのではないかと思うかもしれないが、トンデモナイ。


 筋肉は伸ばされると、縮もうとする性質があり、瞬間的にこれがくるとムチ打ち症に代表される筋肉障害となるわけだ。


 もし慢性的な下げ圧力があると、瞬間的ほどではないにせよ、常に縮もうとして、筋緊張を起こす。これが僧帽筋由来の肩こりの原因である。そこで、椅子に肘掛けを備え付けたりして肩甲骨の下がり過ぎを防ごうとしてきた。つまり僧帽筋負荷を経験的に避けてきたのである。ところが、パソコンなどではパームレストという工夫はあるものの、肘を肘掛けで支えながらキーボードを打つ者はあまりいないだろう。(体勢的に無理である)スマホに至ってはどこにも支えなしで操作しなければならない。


 ここに現代人における肩こりの要因が一つ増えたことになるのだが、これは僧帽筋の下げ圧力に対する無防備さという要因がまた一つ増えたということだ。


※個人的なことで申し訳ないが、私のパソコン入力(文章を打つ)スタイルは低めの安楽椅子に座り、膝にラップトップのパソコンを乗せ、肘を肘掛けで支えながら、同時にパームレストも使って、僧帽筋の負担を減らしている。これで肩こりは劇的に少なくなったが、ラップトップなのでどうしても目線が下を向く。つまり首が前傾してしまって、今度は首への負担がかかるのである。どの道、どういう方法を取っても、パソコン操作は不自然な態勢を強いるので、長時間の連続操作は止めたほうが良い。そういうことで随時休憩を取りながら、部屋をぐるぐるクマのように歩き回り、肩甲骨、首を中心に体操したりしてしのいでいる。


 さて、先に肩甲骨の位置と鎖骨の位置は連動していると述べた。ということは、僧帽筋に下げ圧力がかかって、肩甲骨が下がると、そのまま鎖骨の外側の位置が下がることになる。鎖骨の正常な状態というのはゆるいV字形をしているのだが、外側が下がると、そのV字が崩れてきて水平に近くなる。


 肩甲骨下がりを肉眼で確認するのは余程の痩せで薄着をしていないと出来ないが、鎖骨はそのまま目にすることができる。とくに暖かい季節は素の鎖骨さえ確認できるのだ。ここまで言えば、鎖骨フェチの利点を理解してくれるのではないだろうか。


 そう、このV字形を確認することによって、肩甲骨下がり、ひいては僧帽筋負荷を予想することができて、現時点での肩こり度合いを判断することができるのである。


 さらに鎖骨が下がると胸郭出口が狭くなるので、将来、手指の浮腫みやシビレを伴う所謂「胸郭出口症候群」様な肩こりをも予見できるという寸法である。予見できるということは予防もできるし、そのアドバイスもできるということになる。


 こう考えると整体に携わる者はすべからく鎖骨フェチになるべきであって、まず人を見たら鎖骨に目が行くというくらいにならないとイケナイのである(笑)

 

 とまあ、ここまでは自らの経験と筋解剖図などを眺めているうちに思いつく問題であるから少なくとも一流派を起こそうとする者ならば、とっくに気がついていよう。しかし、リフレパはさらにもう一段深いところまで振り下げて考察する。


 僧帽筋が伸ばされることによって、筋収縮を生むと述べたが、これはアイソメトリック収縮と呼ばれるもので、これがあまりにも長く続くと、実はトリガーポイントが形成される。


 トリガーポイントが育つと筋肉を現実に短縮させ膨大させる。これがコブのようなコリの正体なのだが、下げ圧力に対して、筋肉の短縮膨大が起きると・・・なんと微妙に正常な位置で拮抗してしまう。つまり、みかけ上、肩甲骨及び鎖骨の位置異常が発見できないという事態になるのだ。そのような例をこの目で何度も見てきたから、間違いない。


 骨格の歪み至上主義ではイカンよと普段から述べている所以である。これはいつも口を酸っぱくして言っているので、酢の物が嫌いになったくらいである。骨格の歪みというのは参考までに、というくらいにして、あくまで訴えを効き、実際に軟部組織に触って施術の中で判断していくという地味な作業が必要なのである。


 よって、鎖骨フェチは、他のフェチよりもはるかに役立つが、あまりそれに頼り過ぎるのもよろしくないわけだ。


 ところで、ウチのサロンに置いてある骨格モデルは、鎖骨が水平どころか、ハの字になっている。もしこのモデルがそのまま人間であったなら、肩こりは勿論のこと、胸郭出口症候群にも罹ってひどく難儀しているはずだ。気の毒なタツゾウ君。


※全身骨格モデルはタツゾウ君という愛称がある。多分「立つぞー」から付けられたのだと思う。名付け親は私ではなく、昔勤務していた学院の同僚。因みに内臓トルソーの愛称はキャサリンである。由来は分からない。さらに経絡人形は通称ウー君。姓はウー、名はロンチャ。ウー・ロンチャ(漢字で書くと烏龍茶)。これは私が名付けた。


 骨格モデルは安いもので良いから、備えて置くべきではないかなと思う。解剖図でも理解はできるが、やはり立体のモノは立体で見たほうがよく分かる。その昔は人骨しかなかったのに、今はプラスチック製で質さえ問わなければ、ネットで信じがたいほど安価にて手に入る。この時代特性を利用しない手はないだろう。

 

 話を戻したい。
 鎖骨は例外はあるにせよ、骨格の歪みの中でも、具体的な症状を予見させてくれる実に重宝かつ有り難い骨である。また観察にするにこれほど簡便に出来る部位もなかろう。

 

 しかし男性施術家は電車の中で女性の鎖骨をジロジロ見ない方が身のためである。(あぁ、この人は酷いなで肩だなぁ、鎖骨も落ちちゃって、頑固なコリ症かも・・・手指の浮腫みやシビレに悩まされなければ良いけど・・・)と邪心なく考えていても、一瞬、本人と目があってしまって、嫌悪感タップリな表情を見せられた日には、しばらく凹んで立ち直るのに時間がかかるかもしれない。ジロジロではなくチラ見で全てを把握する術を会得することだ。何事も修行なのである(笑)

 

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